海外旅行に行くときには、訪問する国の文化や習慣、やってはいけない行為など、ガイドブックやインターネットで調べますよね。それと同じように、外国人を採用するときにも、面接をする相手の国のことを調べたり、理解しようとしたりしていますか?
採用担当者の本音としては、「日本で働くのだから、日本のやり方に合わせて欲しい」とお考えかもしれません。でも、同じ日本でも会社によって働き方が違うのですから、国が違えば勝手も大きく変わります。
まずは、「職場でも国民性による認識ギャップがある」という前提で、面接する前に候補者の国について調べてみましょう。複数人の候補者それぞれについて調べるのは大変かもしれませんが、採用時に候補者の国民性を知ることには、多くのメリットがあります。
今回は、採用担当者が理解しておきたい“国民性による認識のギャップ”について、そのポイントとアプローチ方法、中国とベトナムの事例を解説いたします。
外国人の採用時に注意すべき3つのポイント
ここでは、外国人を採用する時に、面接官が“国民性による認識のギャップ”に注意すべき3つのポイントを解説します。採用時のミスマッチを防止し、定着率にも影響する重要なポイントです。
これらを事前に知った上で、面接の前に候補者の国を調べておけば、ちょっとしたやりとりでの違和感も「国民性の違いだ」と捉えられるようになります。また、違いを踏まえて「入社したときには、このようにしてほしい。大丈夫ですか?」と確認することもできますよ。
文化的違いへの理解
日本と他国の文化、価値観、コミュニケーションスタイルの違いを認識し、それらが採用された外国人との円滑なコミュニケーションや、職場適応に影響を及ぼすことを理解しておく必要があります。
例えば、昼の休憩時に交代で電話番をしている職場があるとします。日本人の場合は、「そういうルールだから」で受け容れられるケースもありますが、外国人のなかには「休憩は休憩だから、仕事をするのはおかしい」と考える方もいます。
こういった一見、些細に感じることでも、採用時に説明があるのと無いのでは印象が大きく変わるので、できるだけ事前に把握し、配慮をしたいものです。
また、宗教への配慮が必要なこともあります。最近では、駅や空港、オフィスなどに「祈祷室」の設置が増えていて、主な利用者はイスラム教徒です。
言語の壁
言語の違いが、コミュニケーションの障害となる場合があります。職場に英語を話せる人がいたとしても、その人がずっとフォローをし続けるというわけにはいきません。言語サポートや、必要に応じた言語研修の提供を検討し、入社後のフォロー体制として説明できるようにしておきましょう。
会社が言葉の壁について認識し、フォローアップを考えてくれている、ということが伝わるだけでも、安心感に繋がります。
孤立感
異国の地での孤独感や社会的孤立感が、外国人の定着を阻害する要因となることもあります。社内に他にも外国人がいたり、今後も外国人の採用を増やす計画があったりする場合は、情報として伝えましょう。
また職場のメンバーや、社内の同世代と交流できるような工夫や、生活面で困ったことをサポートする体制を整えることも重要です。
「外国人」でまとめず、国別の配慮が必要です
同じアジア圏として、日本と中国、台湾には共通点もありますが、異なる点も多くありますよね。だから、「欧米人は」などと大まかに括らず、候補者ごとに文化的なギャップを理解し、配慮する必要があります。
令和4年(2022年)10月末現在の外国人雇用状況の届出実績1位のベトナム人(約46万人,
全体の25.4%)、2位の中国人(約38万人、全体の21.2%)について、採用時に注意したいポイントをご紹介します。
ベトナム人を採用するときの注意点
ここでは、ベトナム人の国民性や大切にする価値観、考え方をご紹介します。ひとりひとりの人間には個性があるので、全員が合致するわけではありませんが「こういう傾向にある」と参考にしてください。
家族の影響
ベトナム文化では、家族の意見や期待を重視する傾向にあります。候補者が「家族の期待に応えたい」という気持ちを強く持っていたり、家族が働くモチベーションになっていたりします。ワークライフバランス、特に家族とのバランスを尊重し、仕事と家庭の調和を支援する環境を提供することが大切です。
ベトナムではフレックスタイム制度を導入した会社が多く、個々の時間の自由度は高めです。社内にそういった制度があれば、ポジティブな要素として案内すれば、喜ばれるでしょう。
集団主義と協力
ベトナム人は集団主義的な傾向が強く、チームでの協力や調和を重視します。個人の意見を尊重しつつ、誰かと協力しながら仕事を進められる環境を提供すれば、チームワークを発揮して活躍することが期待できるでしょう。
個人の意見を尊重するという点で、例えば、新人教育のやり方にも工夫が必要です。日本は会社や先輩の指示通りにやることが求められますが、ベトナムは新人の可能性を重視し、やり方は本人に任せるなど柔軟性のある教育をします。
コミュニケーションの慎重さ
ベトナム人は間接的なコミュニケーションを好む傾向があり、直接的な意見や要望を表現することを難しいと感じ、苦手とする人も多くいます。コミュニケーションの障害を取り除くために、意見を言いやすいオープンな環境を作る、1対1の場を定期的に設け課題を共有するなど、コミュニケーション環境を整えることが重要です。
中国人を採用するときの注意点
次は、中国人の国民性や大切にする価値観、考え方です。こちらも全員が合致するわけではありませんし、世代によっても考え方は違いますので、あくまでも参考にしてください。
ヒエラルキーと尊敬
中国文化では、上司や年長者への尊敬が重要視されます。組織内でのヒエラルキーを尊重し、指導者との適切なコミュニケーションや関係の構築を支援することが必要です。
年長者を採用するときには、職場で一緒に働くメンバーにも、年長者として配慮すべきことを周知するようにしましょう。
個人間の信頼関係も構築する
中国人はビジネスにおいて、人間関係を重視する傾向があります。信頼と共感を築くために、職場のメンバーとも時間をかけて関係を深める取り組みが求められます。
その一方で、中国では店舗での接客時にガムを噛んだり、タバコを吸ったりしたまま、友達のような感覚で行うことがあります。職種にもよりますが、中国から来日したばかりの方を採用するときには、実際の店舗や職場を見てもらうなどして、ギャップを埋める工夫が必要です。
努力と忍耐
中国文化では努力や忍耐が重視され、目標達成に向けての努力を惜しまない向上心が強い傾向があります。専門分野に関して、キャリアの成長や発展の機会を提供し、意欲的な姿勢をサポートすることが大切です。
履歴書や面接の身だしなみ
日本ではスーパーのパートや学生のアルバイトの採用でも、面接時に「履歴書」は必須です。でも、中国では飲食店やスーパーなど小さい店のアルバイト面接の場合は履歴書が不要ですし、面接も清潔感があれば基本的にはOKというカジュアルさです。
提出書類や面接時の服装などは、事前に丁寧に説明をすることで、すれ違いを防ぐようにしましょう。
採用担当者のアプローチするときの心得
採用時にどのようなアプローチを取るべきかは、会社の状況や企業の文化によって異なります。しかし、一般的な原則として、個々の国や文化に適応した柔軟なアプローチが良い結果をもたらすことがあります。
そして、以下の2点に配慮することが候補者の印象を良くします。
- 個々の国民性を尊重するという、柔軟性を示す: このアプローチは、外国人の個々の文化や国民性を尊重し、その特徴を理解して受け入れるスタンスを積極的に伝えましょう
- 文化の違いを説明するアプローチ: このアプローチでは、採用時に外国人に、日本との文化的違いや期待値の違いについて説明を行うことを重視します。入社時のギャップを埋められるよう、できるだけ丁寧に行ってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
外国人の採用と定着に向けては、異なる文化やバックグラウンドを尊重し、適切なサポートや環境整備を通じて、円滑な職場適応を支援することが不可欠です。
そのためには、採用時から候補者の国の文化的特徴に注意を払い、採用プロセスや職場環境を構築する際に適切なアプローチを取りましょう。成功の鍵は、柔軟性を持ちつつ、多様性を受け入れる企業文化を構築することです。
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