近年、多くの企業が新たな労働力として外国人労働者を迎え入れています。多様な人材の力を引き出し、企業の成長を加速させることができれば、素晴らしい成果が期待できます。
しかし、一部の企業では外国人労働者が定着せず、短期間で離職してしまうことが課題です。せっかくの人材を長期的に活躍させるためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?
結論から言うと、キャリアに関する希望をすり合わせ、不満を溜め込まないようにすることが必要です。
このコラムでは、外国人労働者が感じている不満の原因と、その具体的な対応策をご紹介します。採用前や面接時の準備が重要な対策となりますので、ぜひご参考にしていただき、人材定着の一助となれば幸いです。
外国人労働者が感じている不満とは?
パーソル総合研究所「日本で働く外国人材の就業実態・意識調査」によると、外国人労働者が感じている主な不満は以下の通りです。
⦁ 昇進・昇格が遅い 28.6%
⦁ 給料が上がらない 28.2%
⦁ 給料が安い 25.6%
⦁ 明確なキャリアパスがない 23.8%
⦁ 無駄な会議が多い 20.8%
注目すべきは、1位の「昇進・昇格が遅い」と4位の「明確なキャリアパスがない」という、キャリアに関する不満です。給料とも密接に関係していますね。
背景として、外国人材のキャリアに対する考え方は、日本人とは異なることを理解しておきましょう。
例えば欧米では、総合職採用よりも職種採用のため、スキルに対して給料が支払われ、待遇も違います。また、終身雇用という考えよりも、スキルアップのために転職するのが当たり前。
そのため、日本の年功序列的な昇進システムは、外国人には理解しにくいのです。
ですから、彼らの実力に応じたキャリアアップを検討し、それを伝えて、隠れた不満を生じさせないようにすることが重要になります。
そのためにおすすめなのが、面接時にキャリアパスを提示し、双方納得した上で採用をすることです。ミスマッチが減少し、採用後のトラブルも削減でき、双方にとって良い採用が出来ますよ。
では、キャリアパスの具体的な準備方法を、一つ一つ解説していきます。
面接でキャリアパスを確認するための準備
前述した通り、外国人労働者を企業に長期的に定着させるためには、明確なキャリアパスを面接で示し、共通認識を持つことが重要です。
ですから、面接時に企業のビジョンや労働者に期待する役割、育成方針を具体的に伝える準備をしましょう。
また、面接時には候補者のキャリアプランを確認し、双方の認識にズレがないようにします。これにより、入社後の不満やミスマッチを防ぎ、安心感を与えることができますよ。
具体的には次の5つを準備、確認してください。
1. 自社のビジョンを明確に提示
2. 労働者に期待する役割と育成方針を明示
3. キャリアアップのロードマップを提示
4. 育成方針を策定する
5. 本人にキャリアプランを確認する
それぞれについて解説いたします。
1. 自社のビジョンを明確に提示
採用のミスマッチを防ぐためには、企業のビジョンに候補者が賛同できるかを確認することが重要です。
そのために、自社のビジョンを明確に伝える準備をしましょう。外国人材の日本語レベルに関わらず、貴社のビジョンがしっかり伝わるような会社の資料や紹介動画を用意することが望ましいです。
明確なビジョンを提示したうえで、候補者がそれに共感できるかを確認します。
2. 労働者に期待する役割と育成方針を明示
労働者が自身の役割をしっかりと理解し、将来のキャリアを見据えることが大切です。そのため、面接時には労働者に期待する役割を伝えます。あいまいな表現ではなく、しっかりと仕事の範囲を決めて提示することが大切です。
具体的には「ジョブ型雇用」で採用し、「ジョブ・ディスクリプション」を作成して、労働者の役割や期待される成果を明確にするのが好ましいでしょう。
ジョブ型雇用とはジョブ型雇用は、職務や役割に基づいて雇用契約を結ぶ方式です。 これにより、従業員が何を期待され、どのような成果を求められるかが明確になります。外国人労働者にとっても、自身の役割と目標がはっきりするため、働きやすくなります。 |
ジョブ・ディスクリプションとはジョブ・ディスクリプションは、職務内容、期待される成果、必要なスキルや資格などを詳細に記載した文書です。 これを面接時に提示することで、候補者が具体的な業務内容を理解しやすくなります。また、期待される役割や成果が明確になるため、入社後のミスマッチを防ぐことができます。 |
下記に、カスタマーサポートのジョブ型雇用でのジョブ・ディスクリプション記入例を示します。
職務内容
⦁ 顧客からの問い合わせ対応(電話、メール、チャット)
⦁ 問題の特定と迅速な解決
⦁ 製品の使用方法に関するガイダンス提供
⦁ 顧客フィードバックの収集と報告
⦁ 内部チームと連携して顧客満足度を向上
期待される成果
⦁ 迅速かつ正確な問い合わせ対応
⦁ 高い顧客満足度を維持
⦁ 問題解決までの時間を短縮
⦁ 定期的なフィードバックレポートの提出
必要なスキルや資格
⦁ カスタマーサポートの経験(2年以上)
⦁ 優れたコミュニケーション能力
⦁ 問題解決能力とマルチタスクのスキル
⦁ パソコンの基本的なスキル
これらを提示することで、面接時に労働者が自身の役割を明確に理解でき、雇用後のミスマッチによる離職を防ぐことができます。
3.キャリアアップのロードマップを提示
候補者が将来的にどのようなキャリアパスを歩むことができるかを具体的に示すために、キャリアアップのロードマップを作成しましょう。
これは、入社から数年後にどのようなポジションに昇進できるのか、そのために必要なスキルや経験は何かを明示するものです。
例えば、「入社後3年でチームリーダーに昇格し、その後5年で部門マネージャーを目指して頑張ってほしい」「そのためには、〇〇が必要です」といった具体例を提示します。
これにより、候補者は自分の成長ビジョンを持ちやすくなりますよね。併せて、昇給についても説明できると良いでしょう。
4. 育成方針を策定する
面接時に候補者に説明できるように、採用後の育成方針を事前に策定しましょう。
キャリアアップのロードマップを実現可能とするために、具体的な育成プランや研修プログラム、メンター制度の準備があることを提示できるよう準備しましょう。
明確な育成方針の提示は、自身の成長のために企業のサポートがあることを候補者が認識し、入社後のモチベーションも高まります。
5. 面接で本人にキャリアプランを確認する
準備が整ったところで、企業が提供できるキャリアパスと、候補者の希望が合致しているかを確認します。
具体的には面接時に、将来のキャリアプランについて候補者に質問しましょう。
1年後、3年後、10年後の目標、日本でどんなキャリアを積みたいのか、ゆくゆくは母国へ戻りたいのか等、候補者が持っているビジョンを共有することが目的です。
また、キャリアや報酬アップに必要となる具体的な事例を準備して説明をすると安心感を与えられますよ。
候補者の希望に添えること、難しい事も、面接時に率直に伝えておくことで採用後の不満は防げます。
なお、人材紹介会社を利用する場合には、1.〜4.を事前に共有することで、より希望に近い人材を選んでもらえるので、効率化が図れます。
まとめ
これらのポイントを押さえることで、ミスマッチを防ぎ、外国人労働者の不満を解消し、長期的な雇用関係を築くことができます。
ジョブ型雇用やジョブ・ディスクリプションの活用、トレーニングとサポート体制の充実などを通じて、外国人労働者が安心して長く働ける職場を作り上げましょう。
これらの具体策を実践することで、企業の魅力が高まり、優秀な外国人労働者の確保と定着に繋がるでしょう。
下記コラムでは、キャリアパスを提示することで外国人材の定着につながる理由を解説しています。合わせてご覧いただくとより理解が深まります。ぜひご覧ください。
『外国人労働者の定着率UPには、面接で〇〇を伝えること』
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