コロナを乗り切るための企業変革と組織内の抵抗

企業の変革と抵抗

業務内容の変更、テレワークの導入、評価制度の見直し等、コロナ危機への対応のために経営者や人事担当者は、忙しい日々が続いています。

新しい収益源を作り出すため、新規事業に挑戦する会社もあります。
組織体制を抜本的に作り変える会社もあります。

現状への特別な対策を行わないとしても、コロナが全く収束しなかった未来や、収束しつつあるものの密を避け続けないといけない未来が来た場合には、大きな変革が必要です。

しかし、変革には抵抗が発生します。

変革の目的が利益の拡大であったとしても、非常時を乗り切るためだったとしても、組織内からは変革への様々な抵抗が発生してしまいます。

変革への抵抗の分類

企業が変革をしようとした際に生じる様々な抵抗については、「マネジメント入門(2009)スティーブン P. ロビンス」の中でわかりやすくまとめられています。

個人からの抵抗

1.習慣

従来の慣れ親しんだ方法から抜け出せない

2.安全

自分の職務が危険にさらされることへの不安

3.経済的要因

収入が減るかもしれないことへの不安

4.未知に対する不安

上手くいくかわからないことへの不安

5.選択的情報処理

都合の悪い情報は無視し、耳触りが良いことだけを聞く

組織からの抵抗

1.構造的慣性

従来の慣れ親しんだ方法から抜け出せない

2.限られた焦点

組織の一部だけに限定した変革の場合、全体の方向性と合わない

3.グループの慣性

グループの規範がそれを拘束し、変革への賛同者が増えない

4.専門性への脅威

特定グループの持つ専門性が不要になる場合の抵抗

5.既存権力

決裁権の再配分による権力の減少への抵抗

6.資源配分

予算やスタッフの縮小に対する抵抗

マネジメント入門(2009)スティーブン P. ロビンス

変革への抵抗の例

変革への抵抗

(例)対面での販売を重視した事業 → オンライン販売にシフト

法人販売チームからの意見:
「オンラインでは商品の良さが伝わりきらないので、売上拡大ができないと思います。」

真意:
オンラインの販売チームが会社における主力チームとなることで、対面販売を強みとしている人物やチームは、社内での権威や予算を失う可能性を危惧。活躍できる場が減り、給与・賞与の減少も心配。実際はそれらを恐れての意見。

オンライン販売チームからの意見:
「競合が多くてオンラインではこれ以上は売れません。」

真意:
オンラインの販売を担当していたメンバー達は、業務量の増加と目標へのプレッシャーを懸念。

店舗販売チームからの意見:
「インターネットで商品を売るよりも、対面で商品を売るスタイルの方が会社に合っていると思います」

真意:
オンラインに強い人材の採用強化を行うために、フレックスタイム制導入を検討していたことへの反発。
店舗勤務のスタッフは、開店・閉店の都合で自由な出退勤が出来ず、身だしなみや態度にも厳しい。他チームのメンバーが自由な雰囲気で働くことが妬ましい。

在庫管理担当者からの意見:
「オンライン販売は色々トラブルが多くなりそうな予感がしますね」

真意:
オンライン販売数が強化すると、日々の入出荷量が増えるため、管理の方法や入出荷のスキームを作り直さないといけなくなる。苦労を重ねて最適化されたこれまでのやり方を変えたくない。

役員からの意見:
「焦らず、もう少し別の方法を探った方が良いんじゃないかな」

真意:
オンラインに力を入れることは代理店にとってあまり面白くない話。成長拡大に貢献してくれた代理店企業に申し訳ない。

抵抗をする個人・組織は、本当の理由を隠し、別の理由をつけて反対の態度を示すことも多いです。気乗りしないまま、納得しているフリをする場合もあります。

変革を行う際には、抵抗する人物・チームが本当は何を気にしているかをしっかりと見抜く必要があります。

また、変革者は必ずしも会社の社長とは限らず、社長が抵抗する側になることもあります。

変革を推進することこそがリーダーシップ

変革を推進することこそがリーダーシップ

ジョン・P・コッターは、リーダーシップ論(1999)の中で、「リーダーシップは変革を推し進めること。マネジメントは複雑化に対処すること。」と定義し、リーダーシップとは、進路(将来ビジョン)を設定し、1つの目標に向けて組織メンバーの心を統合させること、動機づけと啓発を行うことが重要と記しています。

リーダーシップは経営者のみに必要なスキルではありません。変革を推し進める人に必要なスキルです。変革を推し進めるのが役員の時もあれば、事業部長の時もあります。人事部長の時もあれば、若い採用担当者の時もあります。

抵抗勢力への対応

キーパーソンの状況分析

会議や社内メンバーへの発信ツールを用いて複数名へ訴えかける方法と、1対1でしっかり話す方法の両方を上手く活用していく必要があります。

全体への発信時は、変革が必要な理由と変革を行う決意を力強く語り、変革をデメリットと感じる人の不安や心配にも考慮したメッセージを送ります。

1対1ではキーパーソンとじっくり対話を行います。キーパーソンとは影響力を持つ人物です。役職よりも影響力が大事です。頑固な営業部長がいつもすごい頼りにしているパートのおばちゃんは、重要なキーパーソンです。

キーパーソンの状況分析

対話に挑む前に、相手の状況をしっかりと理解しておく必要があります。変革を進め、抵抗勢力を味方に変えていくための会話です。

以下の項目を押さえておきましょう。

・会社での役割、立ち位置、責任、主要な業務
・評価基準
・仕事の価値観、仕事のスタイル
・プライベートでの趣味や好きなこと
・社内や取引先で仲が良い人
・その人が尊敬しているビジネスパーソン、有名人
・その人が頼りにしている社内の人

これらを踏まえてどのように話を持ちかけていくかを検討します。

手法

説得し、行動を促すという点では営業に似ています。ここでは営業活動でも用いられるチャルディーニの法則を紹介します。

1.返報性

先に何かを提供しておいてから相手に物事を依頼する。ギブアンドテイク。
(例:食事をご馳走する、面倒な仕事を引き受ける、評価が上がるような話をその人の上司に話す)

2.コミットメントと一貫性

宣言した内容や過去の発言と合致した要求には同意しやすくなる。
(例:過去に「強い者でなく変化に対応するものが生き残る」と言っていたという話題を出す)

3.社会的証明

多数の支持を集めている内容には無意識に良いものだと感じて同意してしまう。
(例:「このスタイルがいいとニュースをテレビで見た」「この方法がネットで話題になってる」)

4.好意

身体的魅力を持つ人、自分と似ている点がある人、自分に賞賛をくれる人、一緒に頑張った経験がある人等。単純に接触回数が多いことでも親密性を感じる場合がある。
(例:その人の趣味のランニングをしてみて感想を述べる等)

5.権威

「先生」や「第一人者」と呼ばれる人、素晴らしいと讃えられている人には従いやすい。単なるシンボル(肩書き・服装)も有効。
(例:「あの有名な経営者がそう言っていた」「シリコンバレーのあの企業もそうしている」等)

6.希少性

機会が貴重な時、失いそうな時、価値を高めに見積もってしまう。
(例:「取引先から先ほど、こんな話をいただいた。今しかない。やらないなら他社に依頼するらしい」等)

ゴールの設定

対話の結果には、どのようなものがあるでしょうか。結果の種類を整理し、理解しておくことも非常に大事です。

◎ 推進を共に進めてくれる

最も理想的な結果です。

○ 賛同してくれる

協力してくれる、指示を受け入れてくれる形です。

× 反対派になる、反対派のままでいる

避けたい結果です。困難な場合は、妥協への移行を目指しましょう。

△ 共に妥協する

お互いに何かを妥協します。

一覧にしてみれば、種類は想定内のものばかりで、特別なものはありません。けれども、真剣になればなるほど、このシンプルなパターンがわからなくなり、着地点を見失ってしまうことがあります。

変革を推進するなら、とことんやる

相手の状況を分析し、結果を想定した上で対話の際にはチャルディーニの法則を用いる、そんな方法は少々やり過ぎと思われる方もいらっしゃるかもしれません。根回しや陰での会話はしたくないと思われる方もいるかもしれません。

しかし、これらは営業や販売、マーケティングの業務では、日常的に行われている内容です。

手段や方法は、目的次第で善にも悪にもなります。皆に損を与えるために変革をするなら悪ですし、皆のために変革を目指すなら善です。

事前の関係性作りが大事

変革には事前の関係性作りが大事

変革のための対話の方法についてを色々と書きましたが、やはり大事なのは事前の関係性です。

日常の業務の中で、周囲の人に対してどのような態度で、どのように関わり、どのような影響を与えているかが大事です。

いつでも自分のことや会社の利益、評判ばかりを優先している人には、いざという時に誰も協力してくれないでしょう。権力や立場の力だけで人を動かしている人に、心から応援したいとは思いません。

優秀なリーダーは、強固なネットワークを築いてます。直属の部下だけでなく、社外の人物、上司の上司、部下の部下、あらゆる人との良好な関係を作っています。

ネットワークに連なるメンバーの強力さによって変革の推進力が変わります。

関係性作りのポイントは、相手のことを思いやること、自分が得た以上のものを相手に与えようとすることです。

変革をやり遂げる

相応の覚悟を決めて挑んだ変革をやり遂げるには、自分自身の強い意志に加え、変革を一緒に推進してくれる仲間への定期的な動機付けと心のケアとが不可欠です。

変革のためのステップを小刻みに設定し、一つずつ達成させていくことで「自分たちならできる」という達成体験、成功体験を重ねていくことで大きな自信に繋がっていきます。

諦めそうな仲間がいたら、「君ならできる」と声をかけたり、出来ている部分をしっかり褒めること、讃えることも大切です。

変革を推進するにあたり、抵抗を受けるのはリーダーだけではありません。賛同する仲間も同じように抵抗を受けます。沢山の業務を行いながら、新しいチャレンジをし、工夫を続け、批判を浴びながらも変革をやり遂げるには、「自分たちならやれば出来る」と思える感覚が必要です。

進路・ビジョンを語り、動機づけと啓発を継続的に行い、メンバーで一致団結するよう、働きかけましょう。

リーダーシップとは、変革を推進することであり、企業は変革することで新しい時代に対応し、未来を切り開いていくことができます。

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